国立西洋美術館外からのお知らせ

ハードディスク毀れました(涙)。
もう3,4ヶ月前ですけど。
激しく脱力、、西美のデル・サルトやフェルメールの感想書く元気も湧かず...

普段外付けのHDに画像とか保存してて、
時々もう一台のHDにそれをバックアップしてたんですが、容量の関係で
一旦バックアップ用HDの前データ全部消去してから新しくバックアップしてたんです。
それがよりによってデータ消去したタイミングで元データHDも破損というありえない展開!
何日か前からカタカタ音がしてたんでバックアップを急いだのが裏目だった...。
日本美術や中国美術中心にスキャンしたり撮影したりした画像20万枚以上入ってたのに
全てパー。気持ちいいくらいにクルクルパー。。笑っちゃいますね。

データリカバリーできるかどうか診断できるフリーソフトで調べてみようとしたんですけど
診断終了まであと600時間かかりますって表示が...うそだろーって思い1日つけっぱなしに
してみても、ちょっとしか進まず。
へぇ~ホントに600時間かかるんだ~、、、ってやってられんわー!!
データ復元っていくらかかるんでしょうね。数万円ならいいけど数十万じゃなぁ...。
 
でも何かを失った時に感じるこの自由さは何だろう...?
犬が死んだときに心の中で思った、悲しさとウラハラの
「もう散歩連れてかなくていいのか...」みたいな...(ポチごめんな~)



ま、うちのデータ管理状況書いてもしょうがないので
数ヶ月前に書こうと思ってた国立西洋美術館のアンドレア・デル・サルトについて一言二言。

西美がデル・サルト買ったってのをネットで見て
頭に浮かんだのは2000年1月28日N.Y.サザビーズに出て話題になった下(左)の作品。
 (100~150万ドルの評価で出品、下限の100万ドルで落札)
近年デル・サルトの油彩の出物なんてそれ以外に記憶になかったですからね。
西美のサイトに画像が掲載されたのを見たら、やっぱその聖母子像だったあるよ。

なんでそんな昔のオークションを覚えてたかというと、
発見、出品の経緯が一般のニュースになる位話題になった絵だったからです。

この絵、もとは20世紀初めにクララ・ウィンスロップという人がマサチューセッツ州の小さな教会に寄贈したもの(ちなみにウィンスロップ家はマサチューセッツ湾植民地初代知事のジョン・ウィンスロップから続くニューイングランドの超名家で、ブッシュ前大統領やケリー国務長官も血縁の一人です)。
寄贈者も教会も200年位前のコピーだろうと思ってて近年は倉庫に放置されてたんだそうです。
オールドマスターズの絵には時々ある再発見ストーリーですね。

で、サザビーズとしてはなるべく劇的な発見という風に盛り上げて
高く売りたかったんでしょうけど、結果はいま一つでした。
率直に言って絵自体が精彩を欠くものでしたし、
後にサザビーズが作品の状態を正直にレポートしてなかったんじゃないか、工房作とするのが妥当なんじゃないかっていう疑惑も持ち上がりました。
さて、この絵、実は同じ図柄のヴァージョンがオタワの国立美術館にあるのが以前から知られていました(下の右の絵)。

b0283699_056339.jpgb0283699_0581791.jpg            向かって左が西美が買った作品。右がオタワ国立美術館蔵。   

二つの作品を較べてみると、、
オタワの作品の方には、ポントルモやロッソ・フィオレンティーノに受け継がれる白けた感じのカラフルな色彩やスフマート、あるいはサルト独特のやや陰りのある表情なんかがよく表れてて間違いなくサルトの真作だと思うんですけど、西美の作品は全体にいかにも硬い感じで、顔の表情にも深みがなくのっぺりした印象ですよね。。
状態も良くないし、西美の解説パネルが近年の補作(19c~20c初め位の意?)という背景の緑がかなり不快なのを除いても正直あまり優れた作品だとは思えん。

では以前のオークションの時に問題となったように基本工房作なのかというと、隣に展示してある弟子のプリーゴの作品よりも肉体表現なんかには確かにデル・サルトの特徴がよりはっきりと現れてる印象がありますから、やはりサルト本人の手はそれなりに入ってるのかも知れません。まぁ、未完成で工房に放置されてた作品に色々な手が加えられて今の形になっているというようなところですかね。

この絵、2011年にも250~350万ポンド(当時のレートで3.2~4.5億円位)のエスティメートでクリスティーズに出品されてましたが、不落札になったようですし、シンガポールなんかでも売りに出されてたらしい。
この絵に西美が払いましたる大枚は7億1025万5千円!!
結局2000年のオークションの時からブツブツ言ってたマティーセン・ギャラリーからの購入。

正直税金払ってる一国民として、この購入を決めた学芸員の判断には賛成しません。
確かにデル・サルトの絵を買えるチャンスなんて今後まずないでしょうから欲しくなる気持ちは分かるけど、我慢して欲しかった。。

テキサスにキンベル美術館っていうルイス・カーンの建築で有名な美術館があります。
ゲティ美術館やクリーヴランド美術館と並んで潤沢な購入予算を持ってる金満美術館です。
しかしコレクションの質では他の二館に大きく劣ると思います(もちろん中には大変優れた作品もあります)。蓋しこの美術館は画家の名前だけで絵を買う悪いクセがあるのが原因かと。キャプションの名前だけ見てたらもの凄い超一級コレクションなんだけど、実際に心躍らせ眼を楽しませるような作品は少ない。
西美にはそういう美術館にはなって欲しくないんですよね~(一枚で心配し過ぎか...)

とくに(たとえ真作でも)明らかに優れたヴァージョンが別にある絵は買うべきではないと思います。論文でも図録でも必ず「より質の低いレプリカが東京にある」、って言及されちゃいますし、西美ファンとしては、高級品でこそなくとも質実で作り手の心が伝わるような作品を一点一点集めてきたセレクトショップに、突然まがいもんのブランド品が並べられたような不快感、違和感があります。
西美も伝ルーベンスの「ロトとその家族」で懲りてると思ってたんだけどなぁ~。。
 (いや、「ロトとその家族」は高く買ったのが問題なだけで必ずしも悪い絵ではないです)

なんか急に購入予算が増えたら、買い方が雑になってきたような気がするなぁ~。
勿論オタワの作品も確認しに行ってると思うんだけど、何故買った?
やっぱりオークションで直接買えるようにしないと、選択肢も少ないし金も無駄でしょうがないですよ、国会議員の皆さん。。



、そんなこと言ってるうちに一年の経つのは早いもので、
又々西美の新規調達情報が!!
なんかこのブログ...最近は西美の広報係でもやってるような気がするな...

ま、それはそれでいいんだけど、、
今のところ今年度の新収品として西洋美術館は以下の①~⑤の5件の作品(6点)を
購入したようです。
何ヶ月かの内にはホームページに載ると思いますが、
一応作品名から分かることをいくらか調べてみましたよ(間違ってたらご勘弁)。
 (最近は官報の全文がネットで簡単に見られなくなっちゃたので価格は分かりません。
  どなたか会社の有料サービスで全文見れるとか、図書館で見てくる暇があるとかいう方は
  分かったらお教え下さい)


バルトロメオ・マンフレーディ(Bartolomeo Mandredi,1582-1622) 「キリスト捕縛」
 これは去年のサザビーズの展示即売会に出てた下の作品で間違いないと思います。
 マンフレーディはカラヴァッジョフォローワー(いわゆるカラヴァジェスキ、もっと広くテネブリズムなんて言い方もあり
  ますね)を代表する画家の一人で、実際にカラヴァッジョに弟子入りしていた時期もあったと考えられている画家です。

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 その後ロンドンの某有名ギャラリー(割と詳しい解説あり)を経て、西美が買った模様。
  (さっそくギャラリーのホームページでSOLDになってるし...)
 
 実はその前には2002年ウィーンのドロテウムでマンフレーディ周辺作として
 5万ユーロで落札された作品。
 洗浄したら質の高い真作だったというなんだかカラヴァジェスキの絵にはよくある展開。
 西美はいくらで買ったんだろ...怖いなぁ~。200万ユーロくらいならしょうがないけど、
 もっと高く売りつけられてる気がする...。

 「キリスト捕縛」というとなんといってもカラヴァッジョ先生の下の絵が有名。。
  (1990年に200年ぶりにアイルランドで発見されて大いに話題になった作品。
   同構図のもう1枚は何年か前にウクライナの美術館から盗まれた後、悲惨な状態で回収されてこれも又話題になりました)

b0283699_3152173.jpg
 こうして並べてみると(まぁ大樹の陰のマンフレ君には気の毒な話ですが)、 
 やっぱカラヴァッジョは劇的な構図や表情にしても、光の当て方にしても格段に上手いな~。
 兵士の肩甲をド真ん中に置いてハイライトを当てるなんて子憎くたらし過ぎる!!
 無抵抗な救世主を左に追い詰める横暴な権力。
 悲劇に向かう運命を指を組んで諦念とともに受け止めるかのようなイエス。

 兵士を左右に配置し、イエスに驚いたように手を広げさせたマンフレーディの作品と比べると
 その天才ぶりは一層際立ちます。
 
 でもマンフレーディはこのちょっと抑制されたぼんやりとした表情やありきたりなポーズ
 なんかが彼独自の魅力であるのかも知れず、
 長いこと見ていると、いかにも演出されたドラマの一場面のようなお師匠さんの精到な作品
 よりも、むしろ訥々としたなにがしかの真実味が湧いてくるようにも思います。

 このタイミングで買ったってのはやはり来年やるカラヴァッジョ展の布石ですかね?
 西美には狭い意味でのカラヴァジェスキの作品というと
 あんまり質の良くないテルブリュッヘン(派)の作品があるくらいで
 展覧会に並べて出すにはちょっと恥ずかしかったんですが、
 このマンフレーディの作品なら堂々と出せますからね。

 あ、そういえばかつてはコレクターとして有名だったレオポルド・ヴィルヘルム大公の
 コレクションに入ってたみたいで、大公の美術品の管理や購入を任されてたお抱え画家の
 D.テニールス(子)の絵にも書き込まれてるみたい。
 多分下の絵の中央やや右上に描かれてる作品だと思うけど反転してますね?違うんかな?
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 D.テニールス(子)「ブリュッセルのレオポルド大公のギャラリー」,96×128cm,1640,シュライスハイム宮殿(ミュンヘン)

エヴァリスト・バスケニス(Evaristo Baschenis,1617-77) 「楽器のある静物」
 バスケニスは楽器の絵がオハコで沢山ありますから購入作を特定するのは難しいですね。
 個性的・魅力的な静物画家なので質の高いものなら大歓迎。。
 自分としてはリュートや地球儀が描いてあればなお嬉し。
 西美は去年もファン・バン・デル・アメン買ったし、なにげに17cの静物画が
 充実してきましたな。

アンゲリカ・カウフマン(Angelica Kauffmann,1741-1807)「パリスを戦場へと誘うヘクトール」
 これは恐らく去年のオークションに出てたこの作品かと。
 まぁそこそこの絵かなーと思いますけど、女性画家の作品が入るのは良いですね。
 近年西美が買う18cの絵はカプリッチョとか風景画系ばっかりだったし。

 最初ややラフな筆致からシェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』の挿絵版画のための
 油彩スケッチなんじゃないかと思ったんですが、サイズが大きすぎるしクリスティーズの
 解説にもそんなこと書いてないので、やっぱりホメロスのトロイア戦争の一場面を描いた
 神話画(歴史画?)と見るのが正しいようです。

 カウフマンは今回購入した中では一応一番のビッグネームかな。
 それには現代における英語の影響力も大きいと思う。
  (彼女はドイツ系スイス人ですけどロンドンで長いこと活躍しました)
 なんか大陸から英国に渡った画家って、大陸内での移動とは微妙に扱いが違いますよね。
 英語文献で読むからなのか、英国はやはりヨーロッパではないのか...

 ちなみに同じくスイス出身のフュースリとは同い年でロンドンに渡った時期もほとんど同じ。
 西美はフュースリの大作持ってるので、他のロココ絵画からの良い橋渡しになりそうです。
  (そうなると18-19cの英国絵画ももう少し欲しくなっちゃいますね)

レオン・ボナ(Leon Bonnat,1833-1922) 「パヌーズ子爵夫人の肖像」
 ボナっていうと国内では19cのフランス絵画の展覧会で時々1~2枚出品されてるのを見る位
 ですが、欧米の美術館にはかなり入ってるので当時は人気があったんでしょうね。
 カイユボットやロートレック、ブラック、デュフィなんかを教えたこともあり、
 エコール・デ・ボーザールの学長までやった人です。

 今wiki見たら、お父さんがマドリッドで書店やってた関係で10代の何年かをスペインで
 過ごしたらしい。ヴェラスケス風の肖像画もそれなら納得。
 当時のフランスではスペイン趣味がかなり流行ってたってのは(マネなど)有名ですけど
 彼のはそれに乗っかっただけじゃないんですね。

 西美にも近年買ったドレの「シエスタ」とかクールベの「ジプシー女」とかがあるので、
 ゴヤやピカソあたりまで絡めて「19世紀のフランスとスペイン、交差するまなざし」、ってな
 展覧会でもやって欲しい。

 ここ日本だとむしろボナの名は本人の絵よりも五姓田義松が師事した画家として知ってる人の
 方が多いかも。
 もしかして神奈川県博で19日から始まる五姓田義松展に合わせて買ったんかな??
 いや、それはないか。。でも一応タイムリーな買い物かも知れん。

ラファエル・コラン(Raphael Collin,1850-1916) 「楽」「詩」
 どんな絵か分かんないけど、まぁコランお得意の田園風景の中に女性を配した寓意画
 の類ですかね。
 昔やったコラン展に出品されてたような気もするけど図録買わなかったので確認できず。
 いずれにしても西美がわざわざコラン買うってのは国内のコレクションに入ってた作品
 なんだろうと思います(あるいは上のボナの作品も?)。


以上全体としては今年は一般の知名度はないけれど、オールドマスターズ好きのファンや研究者には、おっ!と思ってもらえる渋めのセレクトという感じがします。。
基本こうした美術史的なツボを押さえた収集をベースにするのは大賛成です。
時々はキャッチーな絵やメジャーな画家も買っとかないと
花がなくて一般の人には??ってな絵ばっかりになっちゃいますけどね。
それが名前ばっかで質のイマイチな作品に7億円じゃ困るんだけどさ...(俺もしつこいな)

以上特にオチもなく去年今年の西美新収品批評の回でした。。
 (あ、東近美のフジタの小企画展も良かったですよ。お暇な方は是非!)

→私は昔から見たかった未公開の戦争画が見られて図録も買えて良かったんですが、
  友人は陰気で気分が滅入る展示だったとの感想。。確かにそれはそうかもな...
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# by brevgarydavis | 2015-09-15 00:46

フェルメール、キタ━━━(゚∀゚).━━━!!! グエルチーノそっちのけで西美寄託品2題(3/13若干加筆)。

国立西洋美術館のグエルチーノ展に行ってまいりました。
去年?急遽開催が決定してからとても楽しみにしていた展覧会。。
2012年の5月、グエルチーノの故郷、チェント市が2度に渡って大きな地震に襲われてしまい、
彼の優品を多く所蔵しているチェント市立絵画館なども今なお閉鎖を余儀なくされています。
それ故に今回の日本での異例の展示(2~3m以上ある大作も十数点来日!)が可能となりました。

地震をはじめとする天災の辛さは日本人にとっても他人事ではありませんが、
近年再評価が進んでいるグエルチーノを日本で紹介する良い機会ですし、収益の一部は復興のために寄付されるということですから、災い転じて福となすとなって欲しいものですね。。


で、グエルチーノ展はとても良かったんですが(心配していた通りガラガラではあったけど)、
今回はそっちの本題は置いといて、
西洋美術館の寄託品について残念なお知らせと嬉しいお知らせ2題

こういう時はやっぱり残念な話題からいきますか。
実は一昨年の西美の紀要に旧松方コレクションのルドヴィコ・カラッチ作「ダリウスの家族」が寄託、という高梨光正先生の論文が載ってまして、何~ぃっ!!と驚いて是非このブログでも紹介したかったんですが、体調不良で面倒となり止めてしまっていたのです。
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ルドヴィコ・カラッチ作「ダリウスの家族」、135×119cm、c.1591-92、個人蔵(今東光・旧蔵、西美寄託)

アンニバレ、アゴスティーノ、ルドヴィコのカラッチ一族と言えばいわゆるボローニャ派の祖であり、さらにはバロック絵画を確立した画家の一人(3人だけど...)として西洋美術史上極めて重要な位置を占める一族です(バロック絵画とは何かってのは又別の大問題ですが)。。
西美のように曲がりなりにも通史的展示を目指している美術館にとっては是が非にも一枚くらいは収蔵せねばならぬ画家。展示してあれば、おっ!分かってるね~って見直される位なモンです。。
それが日本に、それも旧松方コレクション中にルドヴィコのこんな優作があったとは!!
表面のニスが黄変してるっぽいですが、洗浄すればかつての美しい色彩を取り戻すと思います。
(今東光旧蔵ってのも面白いですね。若い人は知らないでしょうが私の子どもの頃の印象だと僧侶兼作家で男性版瀬戸内寂聴ってイメージの人です。いや逆か。寂聴さんの方が女性版今東光って言うべきか。でももともと画家志望で太平洋美術会や川端画学校にも通ってたなんて知らなかったな~。この絵に目を付けるとは流石です)

で、グエルチーノ展には当然この1枚も展示されるんじゃないかと期待していたのです(なにしろグエルチーノはルドヴィコに私淑してモロに影響を受けてるボローニャ派の画家。展覧会冒頭にもそれを示すためにチェント市から借りてきたルドヴィコの重要作が展示されています)。
そしたら最後まで展示はなし。。あー、実際に見られる良い機会だと期待してたのになー(´・д・`)ガックリ。
まぁなんとか手放さずに寄託から購入へと繋げていって欲しいものでござる。


でもそれ以上にビックリしたのが良いニュースの方。

なんとフェルメール作という説もある「聖プラクセディス」が西美に寄託されるとのことです!!!
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フェルメールに帰属「聖プラクセディス」、103×83cm、1655、個人蔵(バーバラ・ピアセッカ・ジョンソン旧蔵)

去年のオークションに出品され、10億円余りで落札されてニュースになったので覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。日本人が落札していたということでしょうか!?
最近我が国ではフェルメールファンがやたら目に付くのでそこら辺じゃお祭り状態になってるのかと思ったら、検索しても仙台在住の花耀亭日記さんのブログしかヒットしないぞ?どうしたフェルメールファン?グエルチーノは見に行かんのか??(フェルメールファンに対して悪意は無いです、念のため)

まぁフェルメールか否かは喧しい議論のある作品(詳しくはWikiで)。
現在フェルメールの真作で良いものなら100億円超でも全然おかしくないのですが、まぁ、初期作で全くフェルメールの画風を示していない模写(フェリーチェ・フィチェレッリという同時代のイタリア人画家の作品の模写だと考えられています)となると、たとえ真作だとしても個人的には去年の10億円位というのは妥当な額だと思います。
(勿論フェルメールという名前と結び付けられなければ数百~数千万円位の作品です。一応言っておくと誰が描いたかはっきりしていないというだけでニセモノというわけではありません。実見したことないので適当なことは言えませんが、図版で見ただけでも17世紀のかなり質の高い作品であることはまず間違いないと思います)

さて今回の落札が吉と出るのか凶と出るのか、
こういう興味深い作品をじっくり近所で好きな時に観察できるなんて嬉しい限りですね。どなたか知りませんが早速寄託していただいたことに感謝したいでござる~♪ヽ(^-^ )。


グエルチーノ展は既に始まっていますが(5月31日迄、巡回なし)、常設展示室は現在閉室中で、
再開は3月17日からです。「聖プラクセディス」は寄託を受けました、とだけ書いてあって展示するとは書いてませんが、普通わざわざ寄託されたことを発表することはないので17日から展示されるのだと思います。心配な人は各自確認して下さいね。

⇒確かに17日から展示されるようです。ついでに昨年購入したファン・バン・デル・アメンの静物画と寄贈品のドメニコ・プリーゴの肖像画も展示開始とのこと!!(後者は一昨年のクリスティーズに洗浄前、額縁無しの状態で出品されてた作品のようですが、正直プリーゴさんは知らず...でも西美に欠けてたフィレンツェ・ルネサンスの良さげな肖像画なので楽しみです!)。。しかーも、アンドレア・デル・サルト!!の聖母子も購入して額が出来たら展示予定とのことw( ▼o▼ )w オオォォ!!
今年の西美はオールド・マスターズ好きにはやば過ぎる...
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# by brevgarydavis | 2015-03-08 02:28

東京国立近代美術館、セザンヌの静物画(20億円)を新収蔵!

みなさん、ご無沙汰しております。
1年近くブログ、放置しちゃってました(まだ死んでませんよ~)...

この1年、友人が亡くなったり、自分自身も手術したりと色々ありまして、
年をとると誰にでも起こるようなことではありますが、
人生いつ終わるか分かんないのに、こんなブログなんか書いてなんの意味があるんだろ~ってな
ちょっと厭世的な気分になっておりまして...

それは今もあまり変わってないんですけど
久しぶりに覗いてみたら、今も若干は読んで下さる方々もいらっしゃるようですし、
東近美に新収蔵のセザンヌを見に行って元気も頂いたので
せめて短い報告的なものでもたまには投稿しようかな~と思った次第であります。。


さて、件のセザンヌ。こんな感じ。

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ポール・セザンヌ作 「大きな花束」(R720,V620)、81×100cm、c.1892-95、東京国立近代美術館蔵
(暗くて良い画像を撮るのが難しいので下にリンクしたクリスティーズのサイトでご覧下さい)


例の25億円の特別予算(民主党政権唯一の良い置き土産)による購入。
超財政難のキョービこの予算が続いてるのが不思議ですが、一昨年の西美のセザンヌ、去年の国際美のジャコメッティ(絵画)等々、少なくとも美術ファン的にはまずまず有効に使われてると思います。
(私も先週このセザンヌ見に行って生きる元気もらいましたし!)

今回のセザンヌは1780万ドルということですから単純に今のレートで計算すると20億円超ですか!
日本政府が買った美術品としては過去最高額のはずです。
もとは10年前にオークションに出てた作品で当時なら10億で買えたでしょうし、アベノミクス前の円高の時代なら15億で買えたでしょうが、「あの時買っとけば..」ってのは株や美術品の常でまぁしょうがないですね。
来歴を見ると日本にあった作品のようで知ってる人は知ってた作品なのでしょう。

実際に見てみると決して悪くない。いや、なかなか良い絵だ。。
安井曾太郎や森田恒友をはじめ、セザンヌの影響を受けた日本人画家は枚挙に遑がありませんし、20億円払っても東近美のコレクションに加える価値はあると思います。
40号と大きさもあるし、押し付けがましくなく心にすーっと入ってくる佳品。。セザンヌの作品の中でも比較的珍しいタイプの絵なので貸し出し依頼も結構来そうです。

でも、でも、、またまた「薄塗り、塗り残し」の作品だよ~

なんで日本人が買うのはこの手の作品が多いんでしょうか?
パッと思いつくだけでも、国際美、鹿児島市立美、大原の白樺美術館寄託、ひろしま美の松、愛媛県美、メナード美(清春白樺美旧蔵)などなど沢山ある。最近「夢見るフランス絵画」展で見た大きな松もそうでしたし、今はどうなってるか分からないユニマット美の静物もそうだったな。
「セザンヌの塗りのこし」(洲之内徹氏の名エッセイですね)ってテーマで展覧会ができるくらいあるぞ。

きちんと書き込まれた作品より単純に安いからかな?あるいは東洋画を見慣れてる日本人は西洋人に較べてこうした余白の多い未完成的な作品を嫌がらないってのもあるのかな?

いずれにせよ今回の「大きな花束」、
セザンヌはどうしてここで描き止したのか、これで完成なのか否か、水彩との関連、等々考えてみるのにはとっても良い1枚。。
特別展がない時期の東近美は空きまくってますし、絵の前にはご丁寧に椅子も用意されてるので、皆さんも秋の半日のんびりした気分でセザンヌ翁と向き合ってみては如何ですか。
私も絵を見ている間は洲之内徹ばりに胸中様々なアイデアやら名文章やらが浮かんでいたんですが、神田で天丼食べたら悉く雨散霧消しておりました。。これも絵を見る醍醐味ですね(笑)。
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# by brevgarydavis | 2014-11-19 22:59

中世の木の国を照らした真っ赤な太陽、”NEGORO”

ご存知の方も多いでしょうが、信楽のMIHO MUSEUMで根来の展覧会が開催中です(12月15日迄)。

根来(塗)、とは下地に黒漆、上塗りに朱漆を用いた中世の什器の称。
秀吉の紀州攻め(1585)で壊滅的被害を被った根来寺においてかつて生産使用されていたとの伝承からその名があります。

b0283699_23563334.jpg個人的に根来の素晴らしさに目覚めたのは、遅まきながらつい数年前の大倉集古館での展覧会。。
それまでは根来って主に骨董好きの人たちが強力にプッシュしてる印象で、蒔絵や螺鈿に較べると日本の漆工史の中では傍流というか民芸的なものなんかな~と勝手に思い込んでましたが、初めてまとまった数の作品を見てこれは大変なものを見逃していたと後悔した次第。
ですからMIHOで根来の展覧会やると知った時にはこりゃ万難を排しても見に行かねばならぬ!と心待ちにしておりました。ところが事前に図録も買って(市販有)予習も万端、来週辺り出かけようかと思っていた矢先、台風18号で休館のお知らせ(≧σ≦)...展示はすぐに再開されたものの路線バスいまだ不通..うーん、京都駅から臨時バスが出てるしタクシーやレンタカーって手もあるけど如何するべきか..こういうのって最初の勢いが挫かれちゃって、わざわざ滋賀まで行って漆器見たからって何になる?とか考え出すとどんどん面倒になってきますよね。今の時期京都も混んどるしなー。




b0283699_23571529.jpg
        二月堂練行衆盤(日の丸盆)、d.43cm、永仁6年(1298)、MIHO MUSEUM

(つづく)
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# by brevgarydavis | 2013-11-10 14:21

春ガ恋シイ秋ノ夜長。。

海の向こう、大英博物館で日本の春画展が開催中ですね。
2,3年前に大英博から春画の図録出てたので、その時展覧会もやったのかと思ってたんですが、
今回が本番みたい。すぐに日本でも大差ない値段で図録買えるのはアマゾン様々です。

春画、すごく好きって人いますよね。。私はそれほどでもありませんが(いや、ホントですよ)。
昔は「欧米じゃ春画も芸術って認められてるのに日本では...」なんて憤慨してるマニアの方も多かったですが、そもそも日本で出てた本が怪し過ぎだった..「禁断の浮世絵秘画」とか「Y氏秘蔵○○」とかさ。
印刷もケバケバしい色彩全開で、局部には■や□がペタペタ。古くさいエロ本にしか見えんかった。

でも20年くらい前からですかね、質の良いマジメな複製本が出始めたのは。
私もなるほどこれは素晴らしいと思い直して、結構熱心に見た時期もありましたけど、一通り傑作を見た後はちょっと飽きてきました。人体の絡み合いなんて割とワンパターンですし、同じ浮世絵でも役者絵や名所絵に比べるとどうしても外の現実世界への広がりにも乏しい。
それに展覧会で実物を見る機会がほとんどないってこともあります(考えてみると私も本では沢山見てますが、実物の春画は数点しか見たことありません)。

しかーし、、そんな私でも秋の夜長、一時二時過ぎても頭が冴えちゃって眠れない夜なんかに、
手持ち無沙汰ついでに春画の図録をパラパラめくってみることが時々あるんです。
目的はエロじゃなくて(いや、ホントだっつーの)、
春本の文章。。
春本は口語調で平仮名ばっかりなので、昔の字読むのが苦手な私でも簡単に読めるんですよ。

たとえばウタマロ最後のマスターピース 『絵本笑上戸』。
b0283699_1372624.jpg
【喜多川歌麿 『絵本笑上戸』(色摺半紙本3冊)、享和3年(1803)頃、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館蔵】


    (男) えゝもう喰ってしめへてへほど可愛いくってならねへ。
        客人がハラを立って帰りやぁこっちはマラを立ってこうしてゐる。
    (女) おめへほど可愛い男をもふ五六人ほしい。そうして夜昼続けてさせていたい。
    (男) なるほどさう好きでなけりやぁおめへのよふにはやるめへ。


どうですか..このおバカっぷり。。天下泰平というか、お江戸の夜は今宵も平常運転というか...
 (これでもこれは比較的オチがある方で大抵はもっとずっと下らないのです)

西洋や中国の昔のエッチな本というと、ちょっとこじゃれた文学を衒ったり往年のフランス文庫のような(読んだことないけど)エロ一直線の文章が多いような気がしますけど、江戸の春本はなんだか隣りのバカップルが交わしてるピロートークみたいで親近感ありすぎなのです。
縄文人も古代エジプト人もこんなアホなこと話しながら夜を過ごしてたんだろうな~みたいなね..。

ハレとケでいうと褻の寝物語。。
日常性を描いた文章の普遍性と言いますか、人間なんて何千年たっても所詮こんなもんだよな~っていう安心感や笑いがあって、秋の夜長に何となく物寂しくて寝付けなかったり無聊をかこったりしてた私の頭もトロ~ンと眠くなってくるのです。

春画には絵柄的に素晴らしいものも勿論沢山あるんですが、今日もなんだか瞼が重くなってきたので、
それはそれで又のご紹介ということで...。
では皆さんもおやすみ..な...さ...o(__*)ZZzz
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# by brevgarydavis | 2013-10-21 01:39