またまた運慶仏発見!?美術史の小窓 その1
法政大学の神野祐太氏による
「東京国立博物館・静嘉堂文庫美術館分蔵十二神将像の伝来と作者―京都・浄瑠璃寺からの
流出と運慶銘発見記事―」
という論文。
論旨は明快で、明治35年11月22日の『毎日新聞』に、
件の彫像の胎内に「上坊別当執筆、大仏師運慶」の銘があるとの記事を発見したとのことです。
(勿論運慶仏として認められるためには記事の伝えるとおり
実際に銘があるか否か確認する必要があります)
髪際高2尺余の小像ですが、東京にある慶派の佳品として
仏像好きの人にはお馴染みでしょう。
一般的には運慶周辺の造像という評価で、
たしかに運慶仏としてはちょっと内部からの充実感に欠け、
弱い印象もあるかな~満願寺像や青蓮院伝来毘沙門天像の方がピチピチパンパンで運慶っぽい感じがするけどね~。
工房の問題か、或いは破損が甚だしかったということなので後補の影響が大きいのか、いやいや、こういうのも運慶仏なんだという風に認識が変わるのか、楽しみですね。。
当初岩崎家と東博に入ったのは5体、2体だけだったようですが、2,3年前に申像を東博が購入(8000万円、論文が出る前に買っといて良かった(ー。ー))して結局この2館に12体全部が集まることになりました。
近年新発見が相次ぐ運慶仏。やっぱママの言うとおり自分の名前は書いといた方がいいようで...
東博所蔵の5体は12月2日まで本館1Fで展示中です。。
おまけ・・運慶作品リスト(確実な作品及び比較的広く認められている作品)
1.大日如来坐像(奈良・円成寺多宝塔)、1176、【台座内墨書銘】
2.阿弥陀如来坐像・不動明王二童子・毘沙門天立像(静岡・願成就院)、1186、【像内銘札】
3?.仏頭・仏手・光背化仏(奈良・興福寺)、1186、『類聚世要抄』
4.阿弥陀如来及両脇侍像・不動明王・毘沙門天立像(神奈川・浄楽寺)、1189、【像内銘札】
5.大日如来坐像(東京・真如苑)、1193?、作風・構造
6.大日如来坐像(栃木・光得寺)、1190年代後半?、作風・構造
7.八大童子立像(うち6体)(和歌山・金剛峯寺)、1197、作風・構造
8.聖観音・梵天・帝釈天立像(愛知・瀧山寺)、1201、作風・伝称
9.金剛力士立像(奈良・東大寺南大門)、1203、【金剛杵墨書】
10?.俊乗上人(重源)坐像(奈良・東大寺俊乗堂)、1206以降、作風
11.弥勒仏坐像・無著・世親菩薩立像(奈良・興福寺北円堂)、1212、『猪熊関白記』
12?.四天王立像(奈良・興福寺南円堂)、もと11と一具との説
13.大威徳明王坐像(神奈川・称名寺)、1216、【納入文書】
14?.舞楽面(神奈川・瀬戸神社)、1219頃?、追銘・作風
15.地蔵菩薩坐像(京都・六波羅蜜寺)、作風・伝称
これに加えて
16.十二神将立像(静嘉堂文庫美術館・東京国立博物館)
となりますかどうか、今後の展開に乞うご期待です!!
by brevgarydavis | 2012-11-03 01:52