物見遊山でうろちょろChina その3 -元青花展- (上海博物館編)-

往年の陶磁器愛好家の皆さんの中には、
元青花と聞けば今でも心が躍るという方もいらっしゃるでしょう。
20世紀前半の中国陶磁界のスターが唐三彩だったとしたら、
20世紀後半最大のスターは間違いなく元青花
 【青花とは白磁の素地に青く発色する顔料で文様を描き、その上に透明釉をかけて焼成した磁器をいいます。
  日本語では染付、英語ではblue and whiteと呼ばれます】


唐三彩が鉄道の敷設などに伴って大量に出土したのに対し、元青花はある時はシリアの民家から、ある時は東南アジアの山奥から、ある時はニューヨークの骨董店の店先から、またある時は日本の大名家の蔵品から、一つまた一つと見い出されては美術市場に登場し、高額で取引されて斯界の話題を浚いました。

b0283699_16154317.jpg発端はこの「デイヴィッド瓶」。

かつてはこのような青花磁器の製作は明時代(1368-1644)に始まると思われていました。
年代を知る手がかりとなる「大明成化年製」などの官窯銘が入ったものが宣徳年間(1426-35)以降の作品にしかなかったからです。官窯銘が入っていない古い青花磁器はみんな宣徳以降の民窯の作品だと思われていたのです。
当時は欧米や日本に元や永楽年間(1403-24)の青花の優品があまり知られていなかったこと、また元時代の陶磁関係の文献がほとんど残っていなかったことも災いしました。
それを一変させる出発点となったのが、左の一対の瓶に入っていた銘文。。その中に記されていた年紀はなんと至正11(1351)年という元時代のものでした(現在でもこの瓶以外に宣徳を遡る年紀が入った青花磁器は知られていません)。

 青花龍文象耳瓶(一対)、h.64cm、至正11(1351)年、大英博物館蔵

R.L.ホブソン氏によってこのことが紹介されると、フリーア美術館のJ.A.ポープ氏はトルコのトプカプ宮殿とイランのアルデビル廟にあった膨大な中国陶磁器の中からデイヴィッド瓶と様式を同じくする青花磁器を選び出し(至正様式)、それらは元時代の青花磁器の一群であると発表したのです(1952,1956)。。

後代の青花磁器の中に埋もれていたそれらの磁器があらためて元時代の作品としてまとまった形で取り出されて見ると、技法草創期とは思われないその完成度の高さ、青と白の鮮やかなコントラストで描かれた力強くエキゾチックな文様やシャープな器形が醸し出す清新な魅力、トプカプ(39点),アルデビル(32点)の2大コレクションを含めても世界に100点もないといわれた希少性などが相俟って、60~70年代の陶磁界には元青花の一大ブームが巻き起こったのでした。

当時ディーラーが血まなこになって世界中から探し出してきた元青花の最大の買い手だったのが恐らく日本人。。日本に古くから伝来したとされる10点弱の作品を別にしても、40~50点位の元青花が請来されたんじゃないでしょうか。まとまったものとしては出光、安宅、松岡、梅澤等の蒐集があります。
当初世界に100点弱といわれたその数も、中国での発掘例が増加したこともあって近年では400点余にのぼるということです(ただし元青花の中には文様が略画風でサイズも小さいいわば2級品的な一群があり、400点という数にはそれらも含んでの数かも知れません。ただし出土した破片等は含まず)
最近の収蔵数を国別に見ると、中国(香港含む、香港の天民楼コレクションにはなんと27件の元青花が収蔵されているとか!)、日本、トルコ、イラン、英国、アメリカの順だろうと思います。

しかしながら焼き物好きの多い我が国でも元青花の本格的な展覧会というのは一度も開催されたことがありません(多分欧米でもないはず)。2~3年前に東博でやった「染付展」でも元青花は国内のコレクションから7点(たしか)が出品されたのみでちょっとがっかり...とりわけ同じ時期に北京の首都博物館で元青花展が開かれていると仄聞したものですからなおさらでした。。その図録だけでも取り寄せたいと思ったのですが、面倒になって忘れていたところ...上海博物館入ったら「幽藍神采—元代青花瓷器大展」の垂れ幕がドーン!!久しぶりに垂れ幕で興奮しましたよ...

b0283699_11571249.jpgとりわけ嬉しかったのがアルデビル廟旧蔵の作品(現在はイラン国立博物館蔵)をまとまった数見られたこと。。トプカプの作品はなんどか日本に来てますが、イランのコレクションは日本で公開されたことないんじゃないでしょうか?さすが悪の枢軸とも仲良しの人民共和国☆(+。+*)キャッ。
近年の中国出土品がたくさん展示されていたのもポイント高し。こんなに出土件数増えてるなんて知らなんだ..国土改造中だから沢山でるあるね。。
2005年のオークションで1568万8千ポンド(当時のレートで約32億円)の値がついて話題となったエスケナージの壺も出品されてましたが、出光の王昭君の壺の方がデキがいいな~

 青花鳳凰八宝文稜花盤、d.57cm、イラン国立博物館(アルデビル廟旧蔵)

景徳鎮から世界中の王侯貴族のもとへ嫁いでいって六百有余年。。こうして祖国に帰って一同に会しているのを見ると壺や皿にも積もる話があるだろうにって思っちゃいますね。。

なんだか展覧会の紹介じゃなくて元青花概説みたいになっちゃいましたが、これまで中国陶磁あんまり興味なかった方は取っ掛かりとして元青花あたりから覚えるのもおススメですよ。。元青花持ってればまず中国陶磁としては第一級のコレクションと考えて間違いありません。。
我が国でほぼ常設で元青花を展示しているのは大阪市立東洋陶磁美術館、東博、出光美術館(陶片資料室)、掬粋巧芸館(休み多し)くらいですが、松岡(展示されてる可能性高し)、戸栗、東京富士、根津、MOA、早稲田大学會津八一記念博物館、山口県立萩美術館・浦上記念館などでも元青花は収蔵されているので出会う機会もあると思いますよ。


上海博物館の「幽藍神采展」は1月20日までです (いつも告知がギリでm(_ _)mスマヌ)。
[PR]

by brevgarydavis | 2013-01-13 13:39