韓流窃盗団お縄!!でも盗人にも三分の理?

去年の10月8日、対馬の海神(わだつみ)神社の如来立像が盗み出されたというニュースに驚かれた方も多かったでしょう。仏像好きならすぐに像容が思い浮かぶ有名な仏様だったからです。。その後同じく対馬の観音寺の観音菩薩坐像(これも良く知られた仏像)も無くなっていることが判明し、一仏像ファンとして暗澹たる気分になったものです...

仏像の盗難は日本人によるものも珍しくないのですが、これら2体の仏像が朝鮮半島で制作されたものだったことから近年多発している韓国人窃盗犯による犯行では、との思いがやはり頭をよぎりました。
案の定、数日前の朝鮮日報や中央日報などの報道によると、仏像を盗みだしたのは8人からなる韓国人窃盗団のグループで、うち4人が逮捕され仏像も無事回収されたとのことです。。
釜山港で通関する際にX線検査でひっかかり、わざわざ文化財鑑定委員が調査したにも係らず近代の模造品と判断してスルーさせていたというお粗末な実態も明らかになりました (この鑑定員、仏像ファンじゃないことは確かだ...)。ただ鑑定時の写真や記録が残っていたおかげで日本から照会があった時、直ちに持ち込んだ人物の検挙につながったのは幸いでした。。

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   如来立像、h.38cm、8c、海神神社蔵             観音菩薩坐像、h.50cm、天暦3(1330)年、観音寺蔵

韓国の一部ではこれらの仏像は倭寇による略奪品の可能性があるから伝来の経緯が分るまで日本に返還するなという声もあるようですが、まぁ、韓国政府がそこまで非理性的な対応を取る可能性は少ないでしょう。。

近年文化財返還問題は世界的に大きな問題となっていて欧米では多くの美術館が対応を迫られていますが、日本の場合は今のところ中国がこの問題に関して割と抑制的な態度を取っていることもあって、返還要求のほとんどは韓国からのものが占めています。大きなニュースになった一昨年の「朝鮮王室儀軌」返還(お渡し)などはまだ記憶に新しいところですよね。日本人でさえアメリカの美術館などに日本の美術品 (ほとんどのものが全く合法的に入手されたものです)があることを残念がる人が結構いる位ですから、韓国人の気持ちも分らないではないのですが、問題は朝鮮半島の文化財がどのようにして日本に渡来してきたのか、韓国人(日本人もですが)やマスコミがほとんど知らないまま議論(言い合い?)がなされていることだと思います。。

てなわけで、あまりにもネットにちゃんとした情報がないので、明らかにその能力もなく任にもないワタクシですが日本にある韓国美術についてここでザッと概略を述べてみようと思ったわけなんですが...


まず、韓国の文化財全般について言えば他国に流出した量は必ずしも多くありません。。韓国の文化財研究所による最近の数字では20ヶ国549の所蔵先に14万560点の朝鮮半島由来の文化財(古書も含む)が確認されているそうです(日本に6万5千点、米に3万8千点、独に1万点余など)。。
まぁ文化財というのは金銭的価値でいうと1点1万円もしないようなものから億単位のものまであって、安価なものなら今でも大量に骨董店に転がってますからこうした数自体にはあまり意味はないんですが、ざっくりとした感覚でいうと自国外にある文化財の量は日本が韓国の数倍、中国が20~30倍位というオーダーだろうと思います(本当に適当な見積もりです)。中国ではよく「国外にある中国の文化財は1000万点、うち価値の高いものが100万点」なんて言いますけど、これもそれほど荒唐無稽な数字というわけでもありません。例えば日本にある韓国の古書は4~5万冊位かと思いますが、中国の古書は図書館にあるものだけで200万冊前後にはなるんじゃないかと思います。。
もちろん韓国国内にある文化財も日本や中国と比べると大幅に少ないので流出した割合は低いわけではありませんが、他のアジア諸国に比べれば高いということも全然ありません。。
結果欧米では韓国美術の存在感はかなり薄いものとなっています。アメリカの美術館などでは韓国系移民の存在や近年の韓国経済の発展を受けて(或いは東アジア美術を展示している館では恐らく日中韓3ヵ国の美術をバランス良く展示したいという意欲もあって)、韓国美術の収集に力を入れるところも増えていますが、収集品は陶磁器や19世紀以降の絵画などが中心で優れたコレクションを今から築くのはなかなか難しいようです。。

そんな中、朝鮮半島の文化財に継続的な関心を示してきたほとんど唯一の国が日本だと言ってもよいでしょう。結果、韓国国外にある韓国美術の尤品のかなりの部分が日本にあります。


で、韓国の文化財が日本に流入した時期は次のように分けられると思います。

①奈良時代以前;国家間貿易,私貿易、帰化人による持込
      仏像、金属材料など
②鎌倉~室町時代;高麗,朝鮮との交易、あるいは倭寇による略奪
      大蔵経や高麗仏画などの仏教関連の文化財、水墨画など
③1592年~93年;秀吉の朝鮮侵略に伴う略奪
      書籍,朝鮮王朝仏画,梵鐘など
④江戸時代;日本に来た通信使が日本で制作した書画
⑤近代以降;骨董品としての売買、国による搬出
      高麗青磁、考古遺物、陶磁器を始めとした李朝美術など

(追記)
あ~①から⑤まで流入の状況を詳しく追記しようと思ってたんですが、仕事が忙しくて面倒になって来ました...(すいません)。。

ざっくり概括的なことだけ書くと、

  一番貴重な文化財が多い高麗時代の仏教美術に関しては、基本的には交易や贈答によって
  日本に持ち込まれたものが多いだろうと思われます。しばしば韓国で主張されるような
  文禄慶長の役の時や植民地時代に持込まれたものはあったとしても少数でしょう。
  ただ松浦や対馬などかつて倭寇の本拠地だった地域の半島由来の文化財は、ちょっと他の
  地域とは違った遺品も多く倭寇によって略取されたものである可能性もあります(そうである
  確かな証拠もないんですが...)。
  一方、秀吉の出兵に伴って戦利品として舶載されてきた文化財は比較的はっきりしています。
  16世紀後半を中心とする朝鮮王朝の仏画、蓬左文庫等にまとまって収蔵されている古書など
  です。常宮神社の国宝鐘もそう考えて間違いないと思われます(かつては朝鮮からの分捕り品
  というのは地元の誇りでした)。個人的には朝鮮の文化財ではありませんが、宮廷の図書館に
  所蔵されていた数点の北宋版が最も貴重なものと感じます。。
  近代以降に流出した文化財をどう考えるかというのは難しい問題で、ほとんどの場合取得者は
  善意の第三者として文化財を購入しており、そうした搬出に対しても規制が加えられるように
  なったのはごく近年のことです。それ以降に輸出されたことを証明できなければどうしようも
  ありません。結局法律的には大半が違法性を問えないわけですが、明らかに盗掘などが疑わ
  れるケースもあり韓国人としては口惜しいと思う人も多いでしょう。流入する文化財も多い
  国であれば、文化財は人類共通の遺産なのだから大事にされているならどこの国にあっても
  構わないというような余裕のある態度も生まれますが、韓国はそうではありません。。
  まぁ、ほとんどは貧乏な時に売っちゃったものであることも事実でそれを丸ごと略奪と称する
  のもどうかとは思いますが...
  結局領土問題と同じで一朝一夕に解決する問題ではないんですよね~(´∞` ) 。。


☆ 興味のある人のために参考文献いくつか挙げときます。。

  菊竹淳一,吉田宏志(編)1981 『高麗仏画』、朝日新聞社
  菊竹淳一,鄭于澤(編)2000 『高麗時代の仏画』、時空社(ソウル)
  楠井隆志1997 「高麗朝鮮仏教美術伝来考」(山口県立美術館『高麗朝鮮の仏教美術』展)
  李泰勲2011 「鏡神社所蔵高麗仏画「楊柳観音像」の発願者と日本将来について」
        (『福岡大学人文論叢』42-4)
  村井章介1988 「『倭人海商』の国際的位置―朝鮮に大蔵経を求請した偽使と例として―」
         (『アジアの中の中世日本』)
  姜健栄2001 『李朝の美―仏画と梵鐘』、明石書店
  小泉顕夫1932 「古墳発掘漫談」(『朝鮮』1932.6)
  三宅長策1934 「そのころの思い出 高麗古墳発掘時代」(『陶磁』6-6)
  浅川伯教1945 『朝鮮の回顧』、近沢書店
  長谷部楽爾1983 「高麗陶磁をめぐって」(『朝鮮考古資料集成』、出版科学総合研究所)
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by brevgarydavis | 2013-02-02 17:08